コラム

会津で芽吹く消費者参加型農業 − 伝統野菜の存続から始まった物語 / 編集長:高橋博之

東北食べる通信を通じて消費者とつながった長谷川純一さんは、会津伝統野菜の“種”を着実に未来へとつないでいる。その姿を見ていた若き農家・渡部佳菜子さんも先輩に続いて「消費者参加型農業」をつくろうと奮闘中だ。

高橋博之(東北食べる通信編集長)文=高橋博之(東北食べる通信編集長)写真=山下雄登|2018年02月23日 福島県会津若松市

会津が会津であるために

東北食べる通信2013年11月号で特集した福島県会津若松市の農家、長谷川純一さんは、伝統野菜の小菊カボチャを生産している。一般的なカボチャよりも小さく、大量生産できないことから需要が減る一方で、取材当時の4年前には生産を続ける農家は長谷川さんを除いてひとりにまで減っていた。長谷川さんは手間ばかりかかってお金にならない小菊カボチャになぜこだわっていたのか。

長谷川さんは「300年続けてきた。これをやめたら会津が会津でなくなる。次の世代につなぐ責任が自分にはある」と答えた。それをそのまま記事に書いた。すると、その長谷川さんの思いに共感したひとりの女性が「食べ終わった小菊カボチャの種をみんなで集めて長谷川さんにお返ししよう」と他の読者に呼びかけると、45人の読者から種が返ってきたのだった。

長谷川さんはこの種を、地元の農業高校の生徒たちと翌年まき、育てた。そして収穫した小菊カボチャをまたその応援した読者たちが食べ、再び種を返すというサイクルが4年続いている。その結果、種を取り巻く人々がファンコミュニティとなり、長谷川さんを継続的に支えている。口コミで小菊カボチャの価値は広がり、小菊カボチャを取り扱う飲食店なども現れ始め、需要が増えていった。そして、単価もあがった。

そうした変化に刺激を受け、小菊カボチャの生産を復活させる農家も出始め、作付け面積は拡大している。小菊カボチャを絶滅の危機から救ったのは、長谷川さんの思いに共感し、参加した消費者たちだったのだ。

先輩の背中

生産者だけがつくるのではない。消費者との距離を縮め、消費者に直接生産物の価値を伝え、その価値を理解してくれた消費者と一緒になってつくる農業を実践してみせた長谷川さんの背中を見て、私も続くと名乗りを上げたのが、次号(2018年3月号)で特集する西会津町の渡部佳菜子さんである。

地元の先輩に続き、自らも消費者との垣根を取り払った消費者参加型農業を目指し、日本では難しいとされるCSA(アメリカで普及しているコミュニティ支援型農業)に挑戦しようとしている。東北食べる通信最新号では、そんな彼女の挑戦物語をお届けする。

高橋博之(東北食べる通信編集長)

高橋博之(東北食べる通信編集長)

岩手県議を辞め、マンモス防潮堤に反対し、知事選に出馬。前代未聞の選挙戦で落選し、政界引退。事業計画も書けないのに事業家に転身。NPO東北開墾を立ち上げ、東北食べる通信を創刊する。 http://kaikon.jp