コラム

神楽舞うスタッフ − 地縁血縁に依拠しない外に開かれた地域社会の未来 / 編集長:高橋博之

一緒に働いているうちのスタッフの渡辺瑛子が昨日、東北開墾事務所がある花巻の土澤神楽の舞初めでデビューしました。演目は、舞台を清める「鳥舞」。ぼくが知っているものだけで、花巻市には40地域に神楽があります。人口10万人の町に40神楽。人口当たりの神楽の数はおそらく日本で最も多いんじゃないでしょうか。ユネスコの世界無形文化遺産国内第1号で認定されたのも、花巻市大迫町の早池峰神楽です。その歴史、一説には1000年とも言われています。

高橋博之(東北食べる通信編集長)文=高橋博之(東北食べる通信編集長)写真=高橋博之(東北食べる通信編集長)|2017年02月12日 岩手県花巻市

脱藩

名実ともに、花巻は神楽のメッカなんです。ぼくも大学時代からハマり、神楽鑑賞歴はかれこれ20年になります。でも、この神楽があちこちで後継者不足となり、存続の危機に直面しつつある。早池峰の岳神楽(たけがくら)は、長男しか継ぐことを許されない一子相伝の神楽で、今もそのルールを変えていません。これは稀なケースで、それ以外の神楽は門戸を少しずつ開き、存続の道を探っています。早池峰の大償神楽(おおつぐないかぐら)の弟子にあたる土澤神楽も後継者不足に頭を悩めていました。

そして、まずは女子に門戸を開放しました。さらに、地域外にも門戸を開放。これによって、東京で生まれ育った女子である渡辺も舞台を踏めることになったというわけです。農水省キャリア出身の渡辺は脱藩後、東京の食品関係企業でOLをしていましたが、あるきっかけで早池峰神楽に魅せられると、以来、花巻へ神楽鑑賞に通うだけでなく、東京で自ら早池峰神楽を練習するサークルで稽古を積んでいました。

地域社会の未来

で、確か昨年のちょうど今頃だったかな、東京でぼくが開いた車座座談会にたまたま知人に誘われて参加してくれたのが彼女との出会いでした。懇親会で神楽の話で盛り上がり、あれよあれよという間に、転職して花巻に移住してくれることになり、昨年の初夏にうちのチームに合流。東京時代のつながりを通じて、週に1回、仕事が終わると土澤に向かい、神楽の練習に汗を流していましたが、まさか本番に出演するときがくるとは。。。

しかし、このことは、これからの地域社会の未来を暗示しているようにも思えるわけです。この先、近代の家族制度がもたなくなるであろうことを考えると、ローカルも家族外とのつながりを持たざるを得ないし、外に開いた風通しのよいコミュニティはこれまでの地縁血縁に依拠するコミュニティでの生きにくさを解消することにもつながります。大事なことは、価値を共有する内と外の人が「支援」ではなく「連帯」することで価値を守ることだと思います。

さて、うちのスタッフは他にも、裸参りだ、蘇民祭だ、神輿担ぎだ、雪山登山だと、休日には花巻の文化や自然の価値を満喫しています。そんな働き方ができる東北開墾では現在、新たなインターン生を募集しています。東北開墾のビジョンに共鳴し、最低でも大学を1年休学できる若者の登場をスタッフ一堂心待ちにしております。

高橋博之(東北食べる通信編集長)

高橋博之(東北食べる通信編集長)

岩手県議を辞め、マンモス防潮堤に反対し、知事選に出馬。前代未聞の選挙戦で落選し、政界引退。事業計画も書けないのに事業家に転身。NPO東北開墾を立ち上げ、東北食べる通信を創刊する。 http://kaikon.jp